となりの女の子
優菜のおかげで野球に打ち込むことができた寛太に、とうとう中学最後の夏がやってきた。


これで“引退”となる大会で1戦でも多くの試合回数をこなせること…つまりは“少しでも長く野球をしたい”という強い意志を胸に挑むチームではあったが…
その想いは届かなかった。

一回戦目は過去にも何度か対戦した時のデータから、勝算のあるチームとだったおかげか、対策も気合いも十分で次へと駒をすすめることができた。

が、次の対戦相手が毎年上位に名を残すチームで…もちろん、怖じ気つくことなく、精一杯挑みはしたのだが、
健闘虚しく11対3で敗退、
寛太率いる3年生は中学校生活での野球部の活動に幕を閉じることとなった。


「…」

一度、学校に着いてから解散するための帰り道は無言だった。

声にしようものなら裏返りそうな…皮肉を言ってしまいそうな…

まだ、今日の試合の長所を上げれる気持ちにはなれずにいた。


学校に着き、校門のすぐそばで顧問を囲み整列する部員達。


「えー、ホントに今日は良くやった!…な!それぞれが良く走った試合だった!…まぁ、相手が一枚上手だったなぁ。こればかりはホント、先生の力不足としか言いようがない。でもな、君たちの闘志に先生も期待してしまう場面が幾つもあったぞ!な、草野、惜しかったな!アレはセーフだと思ったぞぉ!アレが皆の闘志に火を点けたな…さすがキャプテン!良く頑張った!…菊地、いつになくキャッチできてたぞ!」

「ふははは…」

ようやく笑い声が出ると、そのまま部員一人一人に声を掛け続ける顧問。

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