となりの女の子
「大竹も良く投げきってくれたな!」

「はい。」

「うん。…そして日沼、4番で副キャプテン、お疲れさん!今日唯一の得点打者だったし守備も良く食らい付いてた!…最後まで何が起こるか分からんのが野球だが、すまん!!」

「!」

「でも、ホントに良く頑張ってくれた!ご苦労さん!だから皆、下を向かず、堂々と家に帰ること!いいな!!」

「はい!!」


こうして、ようやく少しだけ和らいだ表情を浮かべ、足取り疎らに帰っていく部員達の後ろ姿を、無意識に頷きながら見送る顧問だった。


寛太が歩きながら携帯電話の電源を入れると、途端に着信音が鳴りメールマークがついた。


“今どの辺?あとどのくらいで着くかしら?”


母親、怜子からだ。


「あ〜…」

「なに?どーした?」

「わりぃ、俺、先帰るわ。」

「え、あ、うん。じゃな。」

「うっす。」


走って立ち去る寛太は母親に感謝した。


顧問はあんな風に言ってくれても、まだ、自分の中では負けた悔しさを消化できずにいたのだ。

そして走りながら、溢れ出る涙を我慢しなかった。

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