となりの女の子
試合を勝ち抜いていれば、今日も試合があったはずの日曜日。

これまで野球しかなかった寛太にとって、グランドに行く理由がなくなってしまった朝の日差しはやりきれないものがあった。


野球で鍛えられてきたはずの体力は、敗退をきっかけに電池が切れたかのように消耗し、疲労困憊というか…何とも言えない脱力感にうなだれ、ベッドから起き上がることが出来ぬまま、すでに時計の針は12時を回っていた。


「ちょっと!!ご飯を食べちゃいなさい!」


ドアが開くと同時に部屋中に響き渡る怜子の声に、

「っんだよ!!たまにはゆっくり眠らせろっつんだよ!」

と、頭に枕をかぶせて抵抗するも

「こーゆーのは最初が肝心なの!これから休みの度にコレじゃ困るんだからね!」

と、怜子も負けていない。


「疲れてんだよ!」

「違うでしょ!あ、ボキャブラリーが足りないのか?」

「はぁ?」

「“落ち込んでんだよ”の間違いでしょ?」

「…」

「こんな時こそ体を動かす!」

そう言って背中を“バチン!”と叩かれ、葛を入れられる寛太。


「イッテ〜な!この鬼ババア!」

「優しくなくてスミマセンね!」


こんな会話のやりとりをしながらも、一階に下り、食事が用意されたテーブルに着いている。

そして、一つため息を吐いてから箸を手にして、まず一口。

「…」

ただ寝転がっているだけでも腹は空くものだ。

落ち込んでいても食べはじめれば次々と箸が進み…でも、それは決してヤケクソではなかった。

怜子の勝ちだ。
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