tears'blue
「あたし…今まで幸せじゃなかった。…かといって、特別 不幸でもなかったと思う。」
葵衣は淡々と話し始めた。
「父親が亡くなったのは不幸だけど、それは全部 青が関係してたから。それ以外は、別に普通。」
葵衣の冷めた目を見て、緑花は言った。
「“普通”が幸せじゃない訳じゃないの。…皆、“幸せ”を過大評価しすぎなのよ。
“普通”の中で少しずつ幸せを溜めていくのも1つの手。
…だけど、あなたは そんな小さな幸せをも逃してしまってる。」
「そんなの…」
「気付かないフリをしてきたんでしょう?幸せを、いつか失ってしまうのが怖いから。」
「………………。」
「今からでも遅くはない。
四葉は、香水を作る1番最後の仕上げだから。」
そう言って、緑花は優しく微笑んだ。
そんな笑顔を見て、葵衣は泣きそうになった。
彼女には、全て見透かされているような…それでいて不快でない。
信じられない一言一句も、彼女が言えば本当のようで…。
信じてみたくなった。
心に、ひだまりのような、暖かな日差しが射している。