tears'blue
ティラリラリーン・・☆
「来たっ!」
ゆっくりと扉が開くのさえ、今は もどかしい。
完全に開ききる前に碧は葵衣の手を引き、乗り込んだ。
すぐにオフィスがある4989階を押して、【閉】のボタンを連打する。
ゆっくりと扉が閉まる。
「…あっ!」
叫んで、葵衣が透明のエレベーターの扉に張り付いた。
その瞳に映っていたのは、琥珀の倒れる姿だった。
「ねぇっ!助けなきゃ!」
無情にも、エレベーターはゆっくりと下りていく。
「いや、大丈夫。
眠ってるだけだ。」
碧が安堵の溜め息を吐きながら言うが、葵衣は扉に張り付いたまま納得しない。
「だって!あんな倒れて…」
「陽が起きれば琥珀は眠る。
あいつらは、この世界の太陽と月だから。」
「太陽と…月…?
この世界って…?」
ようやく扉から体を離し、葵衣は碧を怪訝な顔で見つめた。
「あ…いや…。この会社の?
2人で社長やってる、みたいな。
だから…交代で働いてるんだよね…。うん。」
ハハハ・・と笑いながら、碧は空(クウ)を見つめた。