ラストイニング〜重ねるイニングの行く先〜
『まずいな…。』

杉山は焦っていた。


試合前の違和感が気になったとはいえ、
立ち上がりに3連打を浴び、
ノーアウト満塁で4番バッターを迎えていた。


「大丈夫か?いつもより、指にかかった球が来ていないけど…。」

マウンドにきた清水が杉山の顔を覗きこむ。

「男に覗かれても、気持ち悪いだけだな。」

杉山はグラブで清水の顔を遠ざけた。

「亜紀ちゃんには許すくせに。」

笑みを浮かべる清水をもう一度杉山は、押しのけた。

「下の名前で呼ぶな。…くだらない事言ってないで、帰れ。大丈夫だよ。」

ぶっきらぼうに言ってからロージンバックを手にした。
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