━ Are You Happy ? ━
□憎いアイツ
『とりあえず…
シャワー浴びて来いよ』
『…しみそう』
『しみるだろな』
翔は徐に立ち上がり
チェストの引き出しを開けて
中から出したタオルを私に投げ付けた
『頭冷やして来い』
タオルとローブを抱えて
バスルームに入ると
大きな鏡に
切り傷まみれの身体が映った。
翔が言った通り
首には鬱血痕
毛細血管が切れて
真っ赤に充血した白目
自分の姿を
直視できないほどに甚振ったリュウを
憎いと思えた
爪先に当てたぬるいシャワーを
ゆっくり上へずらしていく
どこに当てても
傷口にしみて
何度も息を止めた
痛み を知って
今までの自分が
いかに愚か だったかを
知らしめられた気分
“されるがまま” が
こんなに怖いことだったんだと
わかった夏の日。
シャワーから出ると
翔はベッドの上で
ペラペラとファイルを捲ってた
『しみた』
『そりゃそうだ』
何度も同じページを行ったり来たりして
ファイルから目を逸らさないのは
ローブ姿の私に
さすがの翔でも
目のやり場に困ってんだと思う
なるべく翔の視界に入らないように
ベッドサイドのソファの隅っこに
小さく座った
『腹減ったな何か食おうぜ』
目の前のテーブルに
ずっと翔が見てたファイルが飛んできた