―Silver―
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
リビングから出ていこうとする私を引き留める龍希。
「ダメだよ、まだ熱あるんだから。自分ではダメ。お母さんとかに迎え頼めたりしないの?」
「お母さんは…」
私は龍希に私の汚い全てを話した。
「そっか…」
理解してくれた龍希の目は少しだけ曇っているように見えた。それはバンドのときの龍希じゃなくてただ純粋に一人の人間として聞いてくれていたから。
素で嬉しかった。
「ならまず今日はこの家で休んだ方がいい。病院は…診察券ないか。市販の薬で我慢してくれるならだけど(笑)」
「…え?」
「ただこれからどうするのか、ちゃんと決めて話してくれる?」
「はっ、はい。」
いいのかな?私、本当にいま人生で幸せというものに触れてる気がするよ。
ただ…
「でも…かっ、彼女とか来たらヤバくないですか?…勘違いされちゃうかもしれないし…」
聞きたくは無い。でも聞かなきゃ重荷にはなりたくないから…
「心配にいらないよ(笑)そういうのは一応バンドやってる身だし彼女とか作らないんだ。」
ほっと安心する気持ちと私の中のどこかが泣いたような気がした。
複雑な気持ちの中、
「でも、迷惑かけてばっかりですから…」
それがやっぱり心に引っ掛かるんだ…うん…
「俺、女この家にいれたことないけどさ、君さっきまで熱ひどかったんだよ?ファンとかなんとかじゃなくて人間としてやることやってるまで(笑)理解しなさい!あと龍希って呼ぶのに敬語要らないよ(笑)」
「あ、ありがとうございます…でも、敬語はちょっと…」
「だって俺、さっき知ったけど君と同い年だもん(笑)」
「えっ?」
「だから、な?」
子供のように笑いかけてくれる貴方はステージにいる貴方よりもすごく輝いて見えた。