―Silver―
「っ!!!どうしたどうしたっ!?どこか痛いのか?」
近づいてくる龍希に
私は横に首を振り声を振り絞って
「龍希をずっと、ずっとずっと前から見てました…」
「うん…」
「どんなに手を伸ばしても届かなかったんです…辛いときは龍希の声を聴いて…」
「うん。」
「ライブはいつも最前列の龍希の前に行ってた…」
「うん。知ってるよ…」
私はソファーの上に丸くなって醜い泣き顔を見せまいと顔をあげることが出来なかった。
ポンポンっと龍希の暖かい手が私の頭に触れる。
龍希の優しさ…偽善でもいい…その気持ちにも触れた。
「嘘だぁ…。」
―知ってるなんて嘘でしょ?これ以上泣かせないようにするためでしょう?…
「嘘なんかじゃない!」
優しくて元気な声なはずなのにいきなり強い口調で言われた。
「俺は愛芽をずっと…」
軽く咳払いをして
「ずっと前、バンドが出来たときだから2年前から愛芽は俺らこんなアマチュアバンドなのにライブ逃したことないだろ?」
そう私は龍希のバンドのライブは見逃したことがない。
「そんな大切なファン、覚えないわけないだろ?」
ファンという言葉が胸に突き刺さったまま抜けない
けど、こんな私を覚えていてくれてたんだ、見てくれてたんだと思うと
嬉しくて切ない気持ちになった。
「…ありがとうございます」
涙が拭いきれなかった顔を上げ龍希に笑って見せた。
ちゃんとした笑顔を作れているかわからないけど
さらけ出したいけど
私の今の状況は他のファンの子にとっては
絶対なる禁止事項。
そんなことは出来ないと自己規制をかけた。