呪女
彼女は輝く笑顔を浮かべる。

…お礼を言いたいのはコッチの方なんだけどね。

最初に言った通り、願いが大きく・強ければ、反動も更に増すというもの。

まあ彼女がそれを願うのならば、わたしは実行に移すのみ。

学校ではすでに、わたしが言わなくても彼のウワサは暴走していた。

やがて教師に呼ばれ、親まで呼び出された。

けれど彼女のペットを轢き殺したことは言わない。

…う~ん。案外しぶとい。

だから今度はウワサの方向性を変えることにした。

彼の評判を落とす為ではなく、殺したモノに祟られていることにした。

だから彼は不運に見舞われるのだと―案外ウソではないことを広めることにした。

すると出るわ出るわ。

彼の周囲で起こるちょっとした悪いことは、全て祟りのせいにされてしまう。

人の見解とは恐ろしいものだ。

一度傾くと、勢い良く思考がそちらへ流れてしまう。

実際、祟り等ではない。

日常に起こる、ちょっとした不運なことだ。

誰でも何時でも起ってしまうことが、人の口で語られると祟りと成る。

彼が体育の時間に転んだことも、お財布を失くしてしまったことも、うっかりコップを割ってしまったことさえ、祟りのせいにされてしまった。

おかげで彼に近付く人はいなくなり、生徒達は遠巻きにヒソヒソとウワサを流す。

しかし彼は頑なだった。

決して祟りのせいにせず、偶然だと言い張った。

ここで神社にでも行けばまだ可愛げがあったんだけど…人の心はやっぱりよく分からない。
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