呪女
「だからバイクで事故ったなんて話、わたしは信じちゃいないわよ」

言葉を遮って言うと、彼女の眼がぴくっと動く。

動揺したのだ。

「あの日、駐輪場へ行ったわね?」

「あの日って?」

「彼が死んだ日、よ」

「ええ、だって自転車通学しているもの」

「帰る前に、バイクに細工をしたでしょう?」

「………」

…この沈黙は、了承と受け取っていいだろう。

「彼、バイクの改造が趣味だったみたいね。だからアナタのペットを轢き殺すキッカケともなった」

昼間、たまたま彼の友達が話していたのを耳にした。

彼は手に入れたバイクを改造するのが趣味だったのだと―。

スピードをより早くしようと改造して、実験した。

成功はしたけれど、その代償は大きいモノだった。

「だから壊れたバイクを調べても、彼が勝手に改造したせいにされてしまう。よくもまあ良いタイミングで行ったものね」

彼はすでに精神的に不安定になっていた。

いつ自ら命を絶ってもおかしくないほどに。

「…だから言ったじゃない。あなたのおかげだって」

「わたしは確かに彼を追い詰めた。けれど死へ追い詰めたのは、あなたよ」
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