呪女
だけど彼女は否定する。

そんなこと、あるはずがない―と。

でなければ、彼女は自らの罪を後悔してしまうから。

罪悪感でおかしくなりそうだから、否定する。

…でもそんなの、彼と一緒だ。

自ら奪ってしまった命、なのに己の行動に責任を持たないなんて…。

否定してしまえば、彼と全く同じであることを、彼女は理解できないのだろうか?

いや、彼と全く同じだからこそ、認められないのだろう。

虚しいことだ。

わたしは肩を竦めて、深く息を吐いた。

「…とにかく、依頼は終了したわ。成功報酬、貰っても良いわね?」

「ええ、どうぞ。できることなら、何でも」

彼女は大胆になっている。

憎い相手の命を奪ったことで、自分が大きく成長できたとでも思っているのだろうか?

―残念ながら、それはわたしが否定する。

「わたしがアナタに与える『不幸』は、コレよ」

わたしは彼女の目の前に立ち、左手で自分の胸に触れた。

そこは心臓の真上だ。

わたしの心臓の鼓動は弱々しく、そして不定期。

このままだと、数ヶ月も持たないだろう。

「一応聞いておくけど、アナタ、丈夫よね?」

「えっええ…。持病とかはないわ」

「なら結構。普通の寿命で構わないわ」
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