呪女
「まあ今の法律じゃあ、ペットを殺されても相手は軽罪で済んでしまうからね。しかも未成年で免許取りたてだったのなら、なおさら…」

「そんなの許さないっ!」

彼女は立ち上がり、わたしを睨み付けた。

「アイツが不幸にならないなんて、おかしい! 幸せになるなんて絶対に許さないっ!」

女は怒ると修羅になり、とても美しくなる。

真正面から怒りをぶつけられているのに、わたしは冷静にそう思った。

だって眼はとても光輝き、頬には赤みがさしていて、唇も噛み締めているから真っ赤に染まっている。

化粧もせずに、女はこんなにも美しくなれる生き物だ。

くすっと笑い、わたしは彼女を見つめ返した。

「―なら、自分の幸せと引き換えに、彼を不幸にしても構わない?」

「えっ…」

ああ、途端に光が揺らいでしまった。

けれどわたしは笑みを浮かべ、続ける。

「アナタにはわたしが受けるはずだった『不幸』を一つ、引き受けてほしいの。換わりに彼にはアナタが望む『不幸』をもたらしてあげるとしたら?」

「あなたの『不幸』を…。どっどんな内容なの?」

「それはアナタが彼に望む『不幸』次第ね。軽ければ、軽いモノを。重かったら…やっぱり同じぐらいの重さを背負ってもらうわ」
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