呪女
下手に騒げば、彼女の方が悪者になってしまうぐらいに。

今回の件は特にそうだろう。

人気の無い山の中で、ペット一匹がバイクで轢かれた。

彼女が彼を犯人だと分かったのは、そのバイクに彼が乗っている光景を、学校の駐輪場で見たことがあるから。

そして事故った後、彼は一応止まったらしい。

そしてヘルメットを外して、自分の仕出かしたことを確認した。

…そこまでしたのにシラを切れるのは、罪悪感が全く無いからか、あるいは心の奥底ではかなりびびっているかのどちらかだろう。

知らない振りをすることで、自分の記憶から消し去ろうとする努力がある意味、泣ける。

「だけどもう一人、事故のことを知っている人間はいるからねぇ」

彼女は知っている。

そして誤魔化そうとも忘れようともしない。

彼はそれが恐ろしくてならない。

だからこそ今学校で、彼女のウワサを流しているんだろうな。

ウワサの内容は呆れるぐらい、悪いことばかり。

実は援助交際をしているとか、黒魔術をしているとか。

…でも黒魔術については、案外否定はできないかもしれない。

何せこのわたしと契約をしてしまったのだから。

「さて、と…」

契約を交わした翌朝から、動き出さなければならない。

仕事は迅速・丁寧に。

基本よね。
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