呪女
こうすることによってウワサの出所を分からなくして、そしてより多くの人達に興味を持たれるようにする。

興味とは時に残酷な面を見せる。

人を傷つけようが、陥れようが、より深みを求めてしまうものだ。

やがて一ヶ月も過ぎないうちに、効果はハッキリと出た。

彼の評判はガタ落ちに、彼女のウワサは綺麗さっぱり消えていた。

「どう? このぐらいで」

夕焼けの美しい中、わたしは彼女と再会した。

「まだダメよ! ただアイツの評判が悪くなっただけじゃない!」

う~ん。…コレでも頑張ったんだけどな。

わたしの流したウワサは、彼の悪さ。

もちろん、内容はフィクション。

だけどほんのちょっぴり、真実を混ぜた。

―そう、彼がバイクで一つの命を奪ったことを。

もちろん、彼女のことは一切匂わせなかった。

けれど思い当たる彼はそのウワサを聞きつけた時、生きた心地がしなかっただろう。

「でも今じゃずいぶん追い詰められているわよ? そのうちちゃんとアナタに謝罪してくると思うから、ここら辺で、ね?」

優しく諭すように言ったのは、せめてもの慈悲だった。

彼女に対してはもちろんのこと、彼のこともそうだった。

もう充分、精神的には追い詰められた。

彼はそもそも、そんなに悪い人ではない。

ただちょっと、臆病なだけだった。
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