忠犬彼氏。
「つーか遅刻して成績下がってもしらないよ」
「あ、そんときは先輩にもらってもらうんで平気です」
「お前なんか死んでもいらない」
「照れないで下さいよー」
照れてねーよ。
どの辺で照れてるって判断したんだよ。
「耳鼻科行けよ」
「あ、鼻は詰まってないですよ?」
「耳だっつの」
何を言っても屈しなそうだなコイツ。
「紗耶香にナニされたんですか」
空気が一瞬にして変わった。
凍ったっていう感じ。
「何も」
けろりと答えても柴の目線の強さは変わらない。
柴のその瞳に貫かれているようなそんな感覚に陥る。
「何もされてないわけないじゃないですか」
ハッと柴は自嘲気味に笑う。
「弱味って何の話ですか」
「聞いてたの?」
「聞くつもりはなかったんですよ?」
「でも聞いたことにかわりはない」
聞かれた。
柴にバレた。
そんなことだけが頭の中をぐるぐると渦巻いていた。