忠犬彼氏。


「ハモらないでー!!稟汰敬語抜けてるからな!?」

「あ、さーせん」

「私だってハモりたくなかったさ」

バカバカしい言い争いをしていたそのとき

「稟汰!」

高い声が、教室中に響いた。

「紗耶ちゃん……?」

「何してるの」

紗耶ちゃんは焦っていた。

まぁそれもそうだろう。

「別に、ただ璃子先輩といただけ」

柴の態度が心なしか少しだけ冷たい。


「璃子先輩」

紗耶ちゃんはくるりと私の方を向くと張り付けたような笑顔で迫ってきた。

じりじりと迫ってくる紗耶ちゃんについに私は壁際に追い込まれた。


「紗耶ちゃん?」

動揺も、恐怖も何も見せない。

見せたら負けだと私は思っているから。

「稟汰によけいなこと、言ってませんよね?」

「ハハッ、言っちゃった」

けろりと言えば紗耶ちゃんの顔が歪んだ。

そして紗耶ちゃんは腕を振り上げ私の頬をひっぱたいた。

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