忠犬彼氏。
「いったー」
「全然痛そうに聞こえませんが!」
「そう?」
今の光景を目の当たりにした柴たち含めクラスメートたちはピシリと固まった。
“あの青田璃子に手を挙げた”と。
「紗耶香!!」
怒鳴り声とともにパシンと乾いた音がまた響いた。
「樋山……」
「お兄ちゃん……?」
紗耶ちゃんは放心状態だった。
「紗耶香いい加減にしろよ」
「お兄ちゃん……今、今、私のこと叩いて……」
「ああ叩いた」
「お母さんに言いつけてやるもん!!
バカバカバカバカぁ!!」
「言いつければいい。理由を説明してやるからな」
紗耶ちゃんの顔は今やもう涙でグチャグチャになっていた。
「兄妹喧嘩は余所でやって」
「あんた、何で私が叩かれたと……」
「ああ、元凶は私だろうよ。だけどまぁ自業自得ってやつじゃん?」
「あんた本当にむかつく!」
「紗耶香!」