忠犬彼氏。


「いったー」

「全然痛そうに聞こえませんが!」

「そう?」

今の光景を目の当たりにした柴たち含めクラスメートたちはピシリと固まった。

“あの青田璃子に手を挙げた”と。


「紗耶香!!」

怒鳴り声とともにパシンと乾いた音がまた響いた。

「樋山……」

「お兄ちゃん……?」

紗耶ちゃんは放心状態だった。

「紗耶香いい加減にしろよ」

「お兄ちゃん……今、今、私のこと叩いて……」

「ああ叩いた」

「お母さんに言いつけてやるもん!!
バカバカバカバカぁ!!」

「言いつければいい。理由を説明してやるからな」

紗耶ちゃんの顔は今やもう涙でグチャグチャになっていた。


「兄妹喧嘩は余所でやって」

「あんた、何で私が叩かれたと……」

「ああ、元凶は私だろうよ。だけどまぁ自業自得ってやつじゃん?」

「あんた本当にむかつく!」

「紗耶香!」


< 142 / 204 >

この作品をシェア

pagetop