忠犬彼氏。


「そんな、脅すだなんて……」

「璃子先輩」

優しい、怖いくらいに優しい声色で柴は私の名前を呼んだ。

「本当のところはどうなんですか?」

初めて柴が怖いと感じた。
初めて柴に男をみた。

「いや……」

私の口から漏れた言葉は
肯定するのでもなく
否定するのでもなく

拒絶の言葉だった。


「え?」

柴はきょとんとした顔になった。

それでも私は一度柴から男を感じてしまった以上、恐怖心は消えなかった。


「璃子、先輩?」

「や……ごめ……」

無理
その言葉はすんでのところで呑み込んだ。

「璃子!」

華音がこちらに寄ってきて優しく私の頭を撫でてくれた。

「大丈夫、大丈夫」

「華音……」

「璃子にゃん、落ち着いて?」

「美那都……」

知ってもらっている。
それだけで私はすごく安心した。


「璃子先輩……」

ただ一人、柴は呆然としていた。

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