忠犬彼氏。
┣トラウマを憎んで
「柴君、それから樋山の妹さん、今はちょっと帰ってくれないかな」
「……」
「璃子先輩……」
黙りこくる紗耶ちゃんに、私の名前をぽつりとこぼした柴。
二人は華音に促され自分たちの教室へと帰って行った。
「璃子にゃん、大丈夫?」
「私……私……もう、柴とは一緒にいられないっ……」
こんなにも悲しいモノだったっけ?
胸に何かがつっかえたみたいに呼吸が上手くできなくて……
意味も分からない何かに泣きそうになった。
「拒絶することに、こんなに悲しみを覚えたのはいつぶりなのかな……」
いつもなら平気だった。
ただ体が震えて、しばらくの間恐怖心に身体を支配されるだけで済んでいた。
なのに、今は…………。
「青田?」
樋山の不思議そうな声にまで私は震え上がった。
「樋山きゅん、ごめんなんだけど……本当な今は璃子にゃんのことそっとしておいて」
「理由は、言えないのか」
「そんなの言える訳ないでしょ。
璃子を見て察してよ」