忠犬彼氏。


「璃子先輩?」

ガバッと上半身だけ起こし、涙がこぼれ落ちる目でアイツを見据えた。


「行く、の?」

「先輩、声震えてますよ?無理しないで下さい」

無理なんか!

そんな思いを込めて私は首をブンブンと左右に振った。


「私、勝手……柴に、好きでいてって、思っちゃう……」

「璃子先輩、それって……」

違う。
あんたが期待しているような、そんな綺麗な感情じゃない。


「恋愛感情なんかじゃ、ないけど……
ただ、あんたが私から……離れない保証がほしい……」


汚い感情で柴を束縛まがいなことをする気?

「バカ……」

柴はそう呟くと一瞬のうちに私の元に戻り、抱きしめた。

柴の香りが私の鼻をくすぐる。


ぞわりと悪寒が走った。
怖かった。

「嫌……やめて……」

小さな声で拒絶すれば柴は困った顔をしながら私から離れた。

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