忠犬彼氏。


こんな困った顔をさせて私は一体何がしたいんだろう。

これを恋だとか愛だとかと呼べるならば説明はつく。

だけどそんなのとは違う。



それじゃあ、何?


「璃子先輩……俺は大丈夫ですよ」

柴は違う。
何度もそう言い聞かせても、怖いと思う。


もう、ダメなの?

「先輩、ペットは最後までちゃんと飼って下さいよ」

痛い。
柴が、そう嘆いてるように聞こえた。

辛そうにさせてるのは、私……。

「私も捨てたくなんか……」

ない。

でも期待させてどうしたい?


「……なんでもない。」

私はまた柴に背を向けた。

「ごめん、帰って」

私の今の精一杯の冷静そうな声でそう突き放す。
でも微かに私の声は震えていた。

カッコ悪い。


「先輩……」

「いいからもうどっか行って!!」

叫ぶつもりなんて微塵もなかった。
だけどもうこうするしかないじゃん?


< 151 / 204 >

この作品をシェア

pagetop