忠犬彼氏。
教室のドアを勢いよく開ければ
話し声がぴたりと止み、皆が一斉に私を見た。
大丈夫、怖くない。
私は堂々と自分の席についた。
あ、一時間目さぼっちゃったなぁ。
呑気にそんなことを考えているとクラスメートたちは次第に話し始めた。
話すと言ってもヒソヒソと。
まるで誰かの悪口や噂話を口にするように。
「璃子、ノート見せたげる」
「華音……」
「華音たん私にもー!」
「却下」
バッサリ断られた美那都は風化し始めた。
「今日の授業でやったところ、少しわかりにくいけど璃子なら平気だよね」
「あー、うん」
これくらいなら多分ノートでなんとかなりそう。
「青田!」
教室中に響いた声。
わざわざそんな大声出さなくてもいいのに。
そうは思ったものの、口には出さなかった。
「何」
「すまん!」
勢いよく樋山は頭を下げた。
「何で」
「アイツが、紗耶香が……」
「何で」
「悪いことしたって……」
違う、私が言いたいのはそうじゃない。