忠犬彼氏。
華音と美那都に半笑いで言われれば私は大人しくしようとした。
でも柴はそうは思わなかったようで私の腕を取った。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
おいおいおいおい!
まさかまじで?
「し、柴!?」
案の定、私は柴に連れ出されてしまった。
「俺ら、カップルに見えますかね」
ふと柴が呟いた言葉。
その言葉のさりげなさに、私に言ったのか独り言なのか判断に迷った。
だからとりあえず聞こえなかったことにしておく。
「ここなら、人気ないですよ」
連れてこられたのは初めて柴とあった場所。
私の人生が狂い始めた、あの場所。
「先輩」
一瞬にして私は柴の香りに包まれた。
懐かしいような、気がした。
「柴……?」
「稟汰ですって」
「稟汰?」
「好きです」
「知ってる」
「嘘」
「嘘な訳ないし」
柴は私から身体を離すとまじめな顔をしていた。
自然と私の身体は強張る。