忠犬彼氏。
┣柴から稟汰へ
稟汰の気持ちに、私の心がぐらりと揺らいだ。
『ねぇ、覚えてる?』
ふと頭を過(よ)ぎったそのメール。
悪寒がした。
鳥肌が立って、まるで今も私の背後にあの人が立っているように感じた。
「り、稟汰っ!!」
とっさに稟汰にしがみついた。
顔を上げた稟汰はひどく驚いていた。
「先輩……?」
稟汰は私の震える肩を優しく抱いた。
それはまるで壊れ物を、大事すぎるものを扱うような手付きだった。
本当に力を入れればすぐに壊れてしまいそうなモノのように……。
「りーこせんぱい」
背後から聞こえたのはあの人の声ではなかった。
「……紗耶ちゃん」
「稟汰から離れるどころか、怖がるどころか、ラブラブカップルになっちゃいましたね」
彼女を見れば、目が笑ってなかった。
怖い笑顔だと思った。
「今に見てて下さい。」
何をするか、わかってしまう。
紗耶ちゃん、本気でバラす気……?