忠犬彼氏。


私は、ただのあの人のお気に入りのおもちゃだった。

それも必死で維持した結果だ。


メイクも頑張って覚えて、誰よりも綺麗になるように努力した。

スナック菓子とかは最低限食べないようにしたし、体重も増やさないように頑張った。


嫌われたくないから、尽くした。
尽くしたら睡眠時間が減った。
太るから、食べるのも減った。
やせ細る私の血相は悪くなった。
だからメイクでごまかした。

肌が荒れた。
メイクでごまかした。



「なぁ、紗耶香……」

稟汰にいきなり声をかけられて身体がビクンと跳ねた紗耶ちゃん。

「お前、変だぞ」

「変じゃないもん!」

「いいや、おかしい」

幼なじみだからこそ分かる、些細な変化。

稟汰はそういうのをよく気遣える人だと思う。
それもきっと、彼の長所。



私は不規則な生活と、ストレスでぶっ倒れたことがあった。

それでも彼は、私を迎え入れてくれた。
だから私は彼から離れることが、出来なかった。

……ずるい人だった。


< 183 / 204 >

この作品をシェア

pagetop