忠犬彼氏。
私は、ただのあの人のお気に入りのおもちゃだった。
それも必死で維持した結果だ。
メイクも頑張って覚えて、誰よりも綺麗になるように努力した。
スナック菓子とかは最低限食べないようにしたし、体重も増やさないように頑張った。
嫌われたくないから、尽くした。
尽くしたら睡眠時間が減った。
太るから、食べるのも減った。
やせ細る私の血相は悪くなった。
だからメイクでごまかした。
肌が荒れた。
メイクでごまかした。
「なぁ、紗耶香……」
稟汰にいきなり声をかけられて身体がビクンと跳ねた紗耶ちゃん。
「お前、変だぞ」
「変じゃないもん!」
「いいや、おかしい」
幼なじみだからこそ分かる、些細な変化。
稟汰はそういうのをよく気遣える人だと思う。
それもきっと、彼の長所。
私は不規則な生活と、ストレスでぶっ倒れたことがあった。
それでも彼は、私を迎え入れてくれた。
だから私は彼から離れることが、出来なかった。
……ずるい人だった。