忠犬彼氏。
ずるかったけど
「璃子先輩……?」
稟汰のように優しくはなかった。
『綺麗なもの、美しいものにしか興味ない』
あの人の隣で、振られていくたくさんの女の子たちを見ていた。
彼女たちの気持ちは二の次、すべては自分だったあの人。
稟汰は全然違うのに……。
曖昧な気持ちが私の心を揺らす。
私はどうしたらいいの?
「……聡真(ソウマ)さんが、あなたを探してます」
どくん、と心臓が大きく脈打った。
久々に聞いたその名前に、私は恐怖で支配される。
聞きたくなかった。
そんな名前、聞きたくなかった。
「探さ、ないでって……」
「時間の問題じゃないですか?聡真さんは最初からここにいること、知ってたみたいですし」
私は膝から崩れ落ちた。
ガクガクと足が震えて、立てなかった。
「や、嫌だ……」
「璃子先輩!?」
稟汰が駆け寄ってきてくれた。
本当に、優しい奴。
「ごめん、稟汰……私、しばらく姿を消すね」