忠犬彼氏。
「璃子……先輩?何言ってるんですか」
稟汰の声が、微かに震えていた。
困惑の表情を浮かべ、私を見つめていた。
「くらましたところで、問題解決にはならないんじゃないんですか?」
そう、あの人に見つかっているのだから、逃げたって無駄なのはわかっている。
だけど、私だって対策をしなくちゃいけない。
「家にも、実家にも帰らないから」
「璃子先輩、それ本当ですか?」
私、稟汰を振り回してばっかりだな……。
ごめん、の気持ちも込めて稟汰の頭をグシャッと撫でた。
それは思っていたよりもふわふわしていた。
「聡真さんはあなたを必要としてる。あなたも、聡真さんが好きなのでしょう?」
あの人のことが、好き。
認めたくなかった。
もう、私はあの人のこと好きじゃないと言い聞かせた。
そう、確かにもう私はあの人のことが好きじゃない。
でも、あの人は、私に執着していた。
いや、きっと今でも……。