忠犬彼氏。
「いいですよっ」
稟汰はムスッとした顔で言い放った。
「今に俺のことで頭いっぱいにさせてみせますから」
余裕そうに笑った稟汰にまた、“男”を感じる。
なのに、恐怖心はもうなかった。
「何犬がいっちょ前にカッコつけてんのよ!」
居心地が、よかった。
彼の隣は、とてもとても……。
「犬だってかっこよくありたいですよー!」
何故か稟汰はそれだけ言って何かを考え込むように難しい顔になった。
「稟汰?」
「先輩、俺はいつまで先輩の犬なんですか?俺、璃子先輩の彼氏ですよ?」
稟汰の不満。
そうだね、聞いてあげなくちゃね。
「わかった。犬扱いは減らす」
「減らすだけですか!?
今のは止めるとこでしたよ!?」
「えー……だって稟汰って本当に犬って感じがするからさ……」
よく尻尾パタパタ振ってるし。
「俺は先輩の彼氏がいいです……」
あぁ……またふてくされちゃったなぁ。
「稟汰」
「……なんですか」
「あんたは私がちゃんと相手をする唯一の男なの。
それだけじゃ、駄目?」
「だ、駄目じゃないです!!」
ほらまたそうやって尻尾を振るんだ。