忠犬彼氏。
近づく足音。
ゆっくり、確実に近づいてくる。
教室中が、不自然なほど静まる。
怖くて、振り向けない。
華音は、そこにいるであろう人を見て固まった。
「璃子」
変わらない、甘い声。
「何、しにきたの……」
「連れ戻しにきた」
「もう、あんたなんかと関わりたくなんかないっ」
「強がるな、璃子」
意を決して私は振り返る。
そこに立っていたのは、少しだけ、少しだけ背の伸びた、銀髪の彼。
「その反抗的な目……悪くない」
見下すように、笑みを浮かべる。
「かっ、帰れ!!」
「冷たいな……折角彼氏が迎えにきてやったというのに」
「頼んでない!」
喉がヒリヒリする。
怖いよ。聡真が、怖いよ。
聡真……会いたくなかった。