忠犬彼氏。


「璃子」

「何よ……」

「忘れたとは言わせないからな」


忘れた……なんて、言えない。


「聡真……何故、連れ戻しにきたの」

「タイムリミットだ、璃子」

「タイムリミットなんて……言われた覚えない」

「ああ、言ってないからな」

変わらない。相変わらずなんだ。

「俺が、勝手に決めたからな」

「言われないとわからない」

「お前の都合なんて知らん」

相変わらず、ひどい人。


「私、もう聡真のことなんて好きじゃないよ」

私のその言葉に、聡真は鼻で笑った。

「何か文句でも?」

「璃子はツンデレだからな」

薄ら笑いを浮かべ、私の髪の毛を弄(もてあそ)ぶ。


「アンタ……何だってんだよ!」

華音がハッとして、声を荒げた。

「お前こそ、誰だ」

「璃子の、友達」

そしてまた、コイツは笑うんだ。



< 199 / 204 >

この作品をシェア

pagetop