忠犬彼氏。
「稟汰……」
「稟汰!」
稟汰の後を追ってきたのか、紗耶ちゃんも教室に駆け込んできた。
「紗耶ちゃん!?」
紗耶ちゃんは、そこにいる人物を見て固まった。
「聡真さん……どうしてここに」
しかし、聡真は全く驚いておらず、むしろ紗耶ちゃんと会うのは当たり前のような顔をしていた。
「璃子を迎えにきたただけだ」
聡真は私を見据えたまま、紗耶ちゃんの質問に答える。
「聡真さん、私に会いに来てくれないんですか?」
「何故お前に会いに行くんだ。俺は、璃子にしか興味はない」
私は聡真の横を抜け、稟汰の元へ歩いた。
聡真はそれをなにも言わず見ているだけだった。
奇妙だとは思ったが、邪魔されないだけいいので私は気にしないことにした。
「璃子先輩……」
稟汰の私を呼ぶ声は、不安に満ちていて、少し掠れていた。