忠犬彼氏。
「稟汰」
にっこりと稟汰に笑いかける。
大丈夫だから。心配ないから。
「ごめんね……」
ごめんね、変に期待させてしまって。
私は聡真には逆らえないの。だから……。
「璃子先輩……赦しませんから」
「赦さなくて、いいよ」
「璃子、行くぞ」
「わかってる」
私は稟汰の頭をくしゃりと撫でて聡真のあとを追いかけた。
ここからまた、地獄が始まるかなんて、わからない。
「聡真!歩くの速すぎ、追いつけない」
聡真はチラリと私を見てわざとらしくため息を吐いた後、歩くスピードを緩めた。
びっくりして、立ち止まった。
「璃子、早く行くぞ」
「え、あ、うん」
まさか、あの聡真が、私のために……。
以前の聡真ならありえなかった話。