忠犬彼氏。


「せんぱ……」

これ以上この話をする意味がないと思い、柴の言葉を遮った。

「さ、帰ろ。
一緒に、帰るんでしょ?」

「え、はい……!」

辛気臭いの、嫌いなんだよね。
妙に重くて。


「家どっち」

「あ、あっちです。
あの大型スーパーの近所です……」

「じゃ、途中まで一緒だ」

ねぇ、柴、なんでアンタまだそんな顔してる訳?

近いの嬉しいって顔しなさいよ……。


「ほら、さっさと来ないと置いてくから」

「ま、待ってくださいよぉ!!」

「さん、にー」

「わわっ!!」


駄目だよ、璃子。
忘れちゃ駄目。

肝に銘じておくって、言ったじゃん。
揺らいじゃ、駄目。

「先輩の鬼!…………先輩?」

でもさ、少しくらい、いいよね……?

気がつけば、私の口角が上がっていた。

「笑っ……」

あ……。

「笑ったぁ!!璃子先輩が笑った!」

柴は自分のことのようにハシャいだ。

“氷が溶けたー!”
てかなんとか言っている。

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