忠犬彼氏。
今度は別の方面から怒られちゃうからね。
それだけは勘弁。
「柴公帰るよ」
「わん!」
やべぇ、まじでコイツMなんじゃないのか!?
「先輩先輩」
「……」
「無視ですか!?若干傷つきますよ!」
若干ならいいや、別に。
「忠犬はキャンキャン吠えない」
それじゃ駄犬だ。
「……」
しゅんとうなだれる柴に耳と、垂れた尻尾が見えたのはきっと気のせい。
そうだ 眼科 行こう。
「璃子先輩?」
あ、現実逃避してた、完全に。
「家どっち方向ですか?
右ですか?左ですか?」
気がつけば、T字路に着いていた。
柴の家はスーパー付近らしいから右。
しかし私の家は左だ。
「左、んじゃ」
「ちょ、ちょ……先輩!」
「何?」
「家まで送ります!!」
いやぁ正直な所、一人で帰りたい。
「いらん」
「そんな冷たいこと言わないでくださいよぉ」
それは無理なお願いだ。