忠犬彼氏。


「そう、ですか……」

「でも、私たち、また璃子先輩とお話ししたいです!」

「いつでも大歓迎です!」

「わかった、またね!」

手をひらりと振り、教室から出た。

ざわつく、人が行き交う廊下……。

不愉快極まりない。
人混みは、嫌いだ。

「あ、青田璃子先輩!ですよね……?」

あ、デジャヴ……。

「あのっ……俺、先輩のこと」

「はいストーップ!」

「し、ば……?」

「何だよ、羽柴邪魔すんな」

「残念ながら璃子先輩は俺の飼い主なんで勝手なことすんじゃねぇよ」

何言ってんの?

「飼い主?バカじゃねぇの?」

バカ、か。
そうかもしれないな……。


「ソイツ、私の犬なんだ。
“私が”拾ったの、何か文句ある?」

「え!?あ、いや……」

わかりやすっ。
面白味がないな。

もうちょっと、面白い奴だと思ったのに。

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