忠犬彼氏。


「せ、んぱい?」

違う、そんなことが言いたいんじゃない。
違う……違うのに……。

私が言いたいのはそんなことじゃない……。


「ごめん……」

そう言って走り去ろうとした。
しかし、足が、動かなかった。

自分に鞭打ち、必死に動こうとしているのにも関わらず、私の足は、動かなかった。


「あ、れ……おかしい、なぁ……」

「璃子先輩、泣くんですか?」

何言ってんのコイツ。

「泣くわけないし」

「嘘です」

「私が泣かないって言ってんだから本当に決まってるじゃん!」

「だって先輩、泣きそうな顔、してます」

そう言われた途端、私の目から涙が零れた。

「おかしい、な……」

何で私泣いてるんだろう?

「璃子先輩」

何であんたまで泣きそうな顔してんの。
まじ意味わかんない。

わかるわけ、ないじゃん。

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