忠犬彼氏。
「変化じゃん」
変化、なのか?
「拒否、してないじゃん」
確かにそうだけどさー。
「とりあえずさ、焦らずゆっくり考えなって」
「うん……」
結局その後の授業は上の空だった。
「ばいばーい」
「今日部活あんのー?」
色々な会話があつまり、ざわめきが起こる放課後。
私は一人、席に座っていた。
「璃子ー?」
「璃子にゃーん柴にゃん来るまで一緒いる?」
「帰っちゃうよ?」
「ダメだ華音たん、この子聞こえてないよ」
周りの音は、聞こえなかった。
よくわからない、どっかの国の言葉の様に上手く聞き取れない。
『璃子』
その声だけがはっきりと私の耳に届いた。
反射的にバッと顔を上げれば目の前に華音と美那都の顔があった。
「璃子?」
なんだ……気のせいか……。
そりゃそうか……あの人がココにいるわけないもんな。