忠犬彼氏。


それからは昨日と同じ、柴はニッコニコニッコニコしながら私に話しかけ、後を追う。
私はそれを冷めた目で適当に流す。

「それじゃあ先輩、また明日来ますね」

「うん、一生来なくていいかな」

「一生来ますよ」

「日本語おかしいよ、しかもそれ軽くストーカー発言。
お巡りさーん、この人ストーカーでーす」

「いやぁ先輩は冗談きついなぁ」

冗談じゃないっつの。
本気、本気100%!

「俺はストーカーじゃなくて先輩の愛犬ですよ?」

「うわ、自分で愛犬とか言っちゃったよコイツ」

『変化じゃん』
変化では、ないよな。
ただ、馴れただけ。

「そんじゃね」

「さよなら!」

元気な奴。
私が背を向けて、玄関に入る。
コソリとドアを開けて外を見てみた。
もういない。

意外と足速いんだ。
まぁ犬だしなー。

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