忠犬彼氏。


「いや、待ってるだけだし」

「いいじゃんいいじゃん」

よくねぇし。
っつか腕!肩に腕回すな気持ち悪い。

本気でやめてほしい。
あんまりしつこいとプッツンしちゃうよ?


「お前ら……」

なるべく低くそう切り出したその瞬間。
私の肩にあった腕がなくなった。

「何してんだよ」

あ……。

「迷惑がってんのわかんねー?
っつかその人俺の連れなんだけど?」

「柴……」

助けてくれたんだ……。
まぁ、そりゃそうか。

っていうか柴は私の犬なんだから助けない方がおかしいけどね。


「ああん?」
「後から来たくせに偉そうな」

「只今の時刻、待ち合わせ五分前。
すなわち彼は余裕で待ち合わせに間に合ってることになるね」

どうだ。
と、言わんばかりのドヤ顔をしてみせた。

「ちっ行くぞ」
「性格まじきつー」

捨て台詞らしきものを吐き、去っていく背中に私は
あんたらまじださー。
などと叫んだ

ふりをした。

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