忠犬彼氏。


「テンション高っ……」

「え?」

よく聞き取れなかったようで笑顔のまま聞き返してきた。

「別に。ほら行くんでしょ?早くしてよ」

「あ、はい」

私は柴を急かし、劇場に入り、席に着いた。

そして開始のブザーがなり、映画が始まった。

話題になるだけのものだなぁ、と呑気に考える。



『貴方のことずっと見てたの……!』

『ミサキ……』

おお、なんて健気な子なんだ。


そして男と女は離れ離れになり、また結ばれるというベタな展開に入り、映画は幕を閉じた。

「ふぁー、おもしろかったですね!
あの主人公、すごい健気で……本当に最後幸せになれてよかったですね!」

「あ、うん……ソウダネ」

「なんで棒読みなんですか!?」

そういう感じの視点で映画を見てなかった。

「お腹空いたなー」

「話すり替えないで下さいよっ」

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