眠り王子×無関心姫②【完結】
ホテルに着き、親父がいる部屋に行く。
ホテルの一室じゃなくて、職員専用の棟の社長室。
――代表取締役社長。
それが俺の親父の地位。
「入んぞ。」
「………。」
ドアの向こうには、不機嫌そうに眉を寄せた親父となにやら書類を眺めている兄貴。
仕事中なら俺を呼ぶんじゃねえ。
「…まあ、座れ。」
「玲様、こちらに。」
いつの間にか代わってる親父の秘書に促され、ソファに座る。
「朔から聞いているだろう。」
「……ああ。」
「見合いの話があがっていてな。朔は会社を継ぐし、美優はまだ幼い。そこでお前がうちの会社と相手の会社を繋ぐものになってもらおうと思うわけだ。」
「………。」
「返事がないのは了承と受け取ろう。」
だいたい、この時代に政略結婚なんてバカじゃねえのか。
俺が見合いを断ることは頭にねえのか、この親父は。
前よりも薄くなったように感じる頭を睨みつける。
兄貴は兄貴で、我関せず。という感じ。
「見合いの前にマナーチェックだ。井上、家で頼む。」
「承知いたしました。」
「玲、何か質問はあるか?」
「………。」
「…相手に関しては後日、写真などを見せよう。美しいお嬢さんだぞ。」
一欠けらも笑顔を見せずそんなことを言ってのける親父の頭ん中が謎。
結局俺は何も反論できないまま社長室を出た。