百もの、語り。


窓の鍵を開けようと、
片手をガラスにつきました。


自分まで手形つけるのかよ。
さっきポテチ食べてたから
手、油まみれなのに。

そう文句をつけようとした時、
ガラスに触れた兄の手が、
妙に滑っているのに気が付きました。


そして、兄が言ったんです。


『この手形、内側についてる……』


カーテンを閉めた時、
部屋には兄も居ました。

だから、その後に付けられたのだと
兄も知っていたはずです。


とりあえずその日は、
手形を落としてから寝ましたよ。

不気味なので、兄の部屋で。


それで次の日、
隣へ行かずに大家さんに話をしに行って、
そこでようやく知ったんですが、
今、家の隣に誰も住んでなかったんです。





フーッ


44本目の蝋燭が消えました。


< 111 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop