百もの、語り。
教室近くのトイレの前で、
少年が2人、会話をしていた。
「どうした、
そんな生まれたての小鹿みたいに」
そう言うのは背の高い眼鏡をかけた少年で
この学校の制服を着ている。
彼はもう1人の、
違う学校の制服を着た少年の足を小突いている。
「だってさ、いきなり学校の、
自由参加の催しに
参加しないかって言われて、
まさか百物語だとは思わないよね?!」
「しょうがないだろ人数が足りないんだ」
「じゃあ中止にするか、
誰か多めに話せばいいんじゃないの?」
「それじゃ風情が無いだろ」
わざとらしくため息をつきながら言った。
「とにかくさ、怖い話だって知ってたら
僕は絶対来てなかったから!」
「知ってる。
だからこそ、言わずに誘ったんだろ?」
ニヤリと、少年は笑った。
「……僕、もう帰る」
「駄目だ。お前はまだ話してないだろ?
それ以前に、夜道一人で歩けるのか?」
その言葉に、
もう1人の少年は言葉に詰まった。