百もの、語り。
87.海
お盆の時期、
海に入っちゃいけないって言うでしょう?
でもそんなのは迷信だって、
とにかく遊びたかった小さい頃の話です。
波も穏やかで、高くないし、
水温も低くなく、バッチリ。
クラゲもいなかったから、
父の実家の近くの海で、
親には内緒で遊んでいたんです。
そしたらゆらゆらと、
遠くの方で漂う物を見つけました。
ゴミでも浮いてるんだろうと、
特に気にもせずに遊んでいたんです。
1時間程経った頃でしょうか。
ふ、と何か、
突然、見なきゃいけない気がして、
視線を遠くの方へ向けました。
さっきの何かが、
近づいてきているように感じて、
そのまま見つめてみたんです。
すると、少しずつ、
だけど確かに。
引いて行く波には逆らって、
こちらに向かってくる波には乗って。
その何かが近づいてきていたんです。