百もの、語り。
その距離が10mあるかないかになった頃
よーく目を凝らしてみれば、
漂う物の先端はいくつかにわかれていました。
……指、だったんです。
つけ根の辺りまでしか
水面から出ていなくて、
その下は見えませんでしたが。
手、なんだと解りました。
溺れているのか。
それにしては暴れていないし。
それじゃあまさか……?
とにかく助けを呼ぼうか。
でもその前に声をかけてみよう。
そう思った次の瞬間、
私は気が付きました。
漂う手は、
こちらへ手招きしていたんです。
ゆっくりと。