百もの、語り。
95.食事
この間、夜中に目が覚めたんです。
何か物音がしたから見に行くと、
台所から光が漏れていました。
中を覗いてみると、弟がいて、
何かを食べてるようでした。
成長期だし、お腹すいたのかな?
そう思ったんですが、
よーく見てみれば、何も無いんです。
だけど箸を持ってるし、
動かして、口まで運んでいるし、
咀嚼して、飲み込む仕草までしていたんです。
呆然と見ていると、
ふいにこちらを向いた弟と目が合いました
そして『食べる?』と訊いてきたんです
いらないと答えると、
弟は『そう』とだけ言って、
また、見えない物を食べ始めました。
それが、ここの所毎日なんです。
一体弟は、何を食べているんでしょうか。
ふーっ
95本目の蝋燭が消えました。