百もの、語り。
「どうしてそんな事が解るの?」
私が尋ねると、妹はこう答えました。
『だってあれ、足なんだもん。
無いから、歩けないんだよ。
お姉ちゃんがそれを拾ってから、
ずっとこっちを見てたもん』
足?これが?
妹の話は要領が掴めない。
どうしようかと悩みながらも、
きっとこの子は寝ぼけてるんだ。
怖い夢でも見たのね。
だからそんな訳は無いと、
私は再び懐中電灯を手にしました。
そうしてテントを捲ると、
予想していたよりも近くに、
その人の姿はありました。
声をかけようとして、気づきます。
……あの人、足を引き摺ってる。
妹の言った通り、歩けないようでした。
でも怪我か何かをしているのかもしれない
そうは思いましたが、
正直、気持ち悪かったんです。
なんていうか、雰囲気が、違う。
そんな印象を持ちました。
申し訳ないけどやっぱりテントに戻ろう。
そう思い、体を戻そうとしましたが
スイッチを押していた懐中電灯が
うっかりと、外を照らしていました。
いけない!
その光で、人影がこちらを向いた時、
思わずそう思いました。
理由は解りませんが
無性に恐怖を覚えた私は、
急いで体を引っ込ませました。
無事に頭までテントに戻ると、
妹も怯えたように、こちらを見ています。
「……大丈夫よ」
根拠はどこにもありませんが、
私はそう言うしかありませんでした。
忘れて、もう寝てしまおう。
寝袋にもぐりましたが、
やっぱり外からずるずると、
あの音は聞こえ続けています。