百もの、語り。
19.こっちを見てる
こないだ遊んだ帰り。
夜に、人通りの少ない道を通ったんです。
そうしたら、看板の影から
ひょこって顔だけ出して
こっちを見てる人が居たんですよ。
顔はよく覚えてなくて、
男か女かも解らないんですけど……。
でもとにかく、気味が悪いなって。
だけどそこを通ってしか、
家まで帰れないんですよ。
だから仕方なく、
早く通り過ぎちゃおうって思って
急いで、早足で進んでたんです。
目が合っちゃわないように、
焦点をずらしながら時々確認すると
やっぱりこっちをじっと見てるんですよね
それでようやく隣を通り過ぎる時、
看板も見えたんですけど、
その看板、2枚が背中合わせになってて
隙間に、その人が立ってたんです。