百もの、語り。
34.瓶詰
うちね、保存食に瓶詰作ってるの。
それは母方の、曾祖母の代からで
うっかり食べ忘れたふるーいのが、時々出てくるんだ。
そういうのは、気持ち悪いから
流石に捨ててるんだけどね、
ちょっと気になるじゃない?
中身。
だから、開けちゃう時もあるんだ。
この間も、古いのが出てきてさ、
紙が貼ってあったんだけど、
もう劣化しすぎちゃって、読めないの。
その瓶、外側が真っ黒だから、
何が入ってるのかも想像できなくて。
開けてみたんだ。
そしたらね、中に入ってたのは、
なんか、丸い、球だったよ。
正体が解らなかったんだけど、
瓶の蓋の裏に、直接文字が書かれてて
それは読めたんだ。
大きく、『目』って。
それだけ書かれてたの。
……保存食?
ふっ!
34本目の蝋燭が吹き消されました。